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裁量労働制と残業手当

2014年09月16日

近年の傾向として、特に外資系企業やベンチャー系企業において、裁量労働制が導入されています。伝統的な日本企業も、課長職以上は非組合員となりますので、裁量労働制を採ることになりますが、その勤務時間は組合員時代とあまり変わらなく、朝出勤し、夕方帰宅するというルーチンを繰り返すことになります。

裁量労働制の意味合いとしては、勤務時間にとらわれず、会社から求められる結果を出すこと、経営者の目線を持ち、企業の売上に貢献することなど、要求は厳しくなってきます。よって、その期待に応えられない人は、会社都合でクビになってしまうということになります。私の好きな『課長島耕作』でも、社長が気に入らないからという理由だけで、耕作はクビを宣告されるという描写があります。その時の社長は、「君は非組合員や、わしが嫌いだからクビというだけの話や」ということを言われます。

実際このような運用がされているかはわかりませんが、大手企業であれば、会社都合で退職する場合も、手厚いパッケージが用意されているようです。ただ、中小企業などはそのような手厚いパッケージは無く、突然解雇されてしまう傾向があります。

そして最近、ホワイトカラーエグゼンプションが再度議論されています。簡単に言えば、事務職の人は、残業代がつかないという制度です。これが労働者にとって過酷な環境となると反対する人が多く、思い切った導入が出来ない状況であります。

私はある候補者に、現在残業はどのくらいしていますか?という質問を面談の際聞きましたところ、その方は、残業の意味がわからない、とおっしゃいました。理由は、自分が与えられている仕事があって、それがまだ終わらないから残っている、会社にはそれを考慮した給与を貰っているので、あとは自分の問題である、という意味合いのお話を受けました。

私自身も一番最初の仕事が住宅営業で、ノルマがある仕事でした。月1棟がノルマで、四半期で目標の粗利を達成することが求められました。達成率が100%を超えれば、インセンティブが入り、さらに120%など超えていけば、更に割増の給与が得られました。要するに結果を求められていたのです。よって、その結果が得られるのであれば、一日何をやっていても文句は言われませんでした。

この2つの事例は、結果からのアプローチです。裁量労働制とはまさにそのことなのでしょう。

外資系企業やベンチャー系企業の特長として、タイトルが大きくなるほど、一生懸命働いています。部門長がいつも最後に帰宅することが当たり前ですし、彼らの考えもそれが普通なのです。経営目線を持つということは、それなりの責任があり、その責任を達成するために、自らが陣頭指揮をするという意識が求められます。

一方、管理職になると仕事がなくなるという会社も多いと思います。どんどん現場から離れ、やることが無くなってくること。だから一番先に自分は帰宅する、となります。ただそのような会社は、上司が帰らないと部下も帰れないという空気があるので、部下としては早く帰ってくれよ、と思ってしまいます。

残業手当があると、ただ残るだけで給与が増えます。このことは、仕事が出来る人のほうが給与が少なくなるという結果ももたらします。仕事が出来る人は、自分の与えられた業務を効率よく片付けますから、タイムマネジメント力も高い傾向にあります。その余った時間をどう過ごすか、自分の為に使えるか、人のために使うのか、がポイントになってきます。

日本の組織は、機会不平等、結果平等です。仕事が出来る人に多く仕事が振られる傾向がありますが、結果としての給与は皆同じ、ということです。仕事を多くすれば、その分出世するスピードが速いか、というと、これも言い切れません。上司との相性で、仕事が出来なくても引き上げられる人もいれば、要領がいい人が出世するということも多くあります。

要するに、フェアに評価してもらうためには、結果で評価することが大切であるので、それを推進する残業手当廃止の方向は私は正しいと思っています。

マックスウェーバーの本にこのような描写があります。(大体の雰囲気で)

企業経営者が今以上の生産性を上げるために、従業員にやる気を引き起こしたい、そうだ、彼らの給与を上げれば、一生懸命仕事をしてくれるはずだ、そう考え、給与を1.5倍にします。しかし、それを意気に感じた従業員はわずかで、むしろ時間給が良くなったので、手を抜く従業員が増えたというのです。多くは給与を上げるよりも、なるべく働かないという観点から、時給が増えたので、働く時間を減らしたというのです。それを目の当たりにした経営者は、むしろ給与を下げたほうが企業の効率は良いと考えるようになった、という話です。

残業手当もこの例に当たると思います。本来仕事は勤務時間内に終わらせることが当たり前なのですが、それでは給与が少ないので、1時間、2時間残業して給与を増やそうと考えます。もし残業が貰えないなら、このようなタイプの従業員は真っ先に帰宅するでしょう。

要するに、自分の生産性を意識することが大切であり、結果をコミットすることで、自分自身の価値を高めることが必要だと思うのです。そして自分の給与を経営者と交渉し、給与を上げていくことこそが、本来の姿でありますし、これからグローバル競争を生き抜くために必要な考え方だと思う訳であります。