転職に際する、セカンドオピニオンについて
2013年05月16日
転職活動において、知っている企業に応募するだけでなく、聞いたことがない企業の案件につき、選考を進めるケースが多いと思います。それは、世の中企業はゴマンとあり、候補者自身が知っている企業はほんの一握りというのが現実だからです。だからこそ、我々のようなエージェントの存在価値があるのだと思っています。
候補者がやりたい仕事をしっかりと聞き、今までのキャリアを踏まえ、案件を提案をさせていただく、それがエージェントとしての使命だと思いますし、それを行うことで、報酬を得ていると考えています。その作業がなければ、エージェントの存在意義はなく、候補者が直接応募し、ジャッジを得ればいい、となってしまいます。
このコラムでも言及しましたが、医者で例えると、候補者の悩みを聞き、症状を診断することがすべての始まりです。候補者は、親にも、奥さんにも、まして友人や上司や同僚にも言えないことを相談されます。そして今後のキャリア形成につき、熱く語っていただくことで、我々はその要望に応えようと努力することになります。
面談する人の中から、希望の企業、職種に就ける人はほんの一握りです。私も面談した人のうち、数パーセントの方しかご要望に応えることができない、それが現実です。
さて本題ですが、内定が出た候補者は、果たしてこの企業を選んでよいのか、と考える傾向にあります。
内定に至るまでの戦いは、大変なものですから、ただがむしゃらに取り組み、そこで内定という現実に初めて遭遇すると、ほとんどの人はナーバスになります。
そしてここで初めて、今まで相談していなかった人たち、例えば、友達や知り合いなどに、今回の内定についてどう思うか、という相談をするという候補者が出てきます。候補者は、セカンドオピニオンのような気持ちで聞いているのでしょう。一見固い作業で、必要性を感じるのですが、この相談は、人生の選択を誤る危険性が含まれていると私は感じます。
例え、親兄弟であっても、候補者の想いを深く理解している人は少ないと思います。おおよそ自分の持っている価値観を語られ、場合によっては押し付けられ、また、否定などをされ、結果かえって混乱するだけだと思います。まして友人などになると、いわば外野のヤジです。無責任にアドバイスと称し、好きなことを言うことになります。
相談を否定しているのではなく、相談するタイミングと人選が大切だということです。内定の結果を、どう思う?と聞く行為自体、無謀な相談だと思います。
私は初回面談の際、既婚の方に関しては、必ず配偶者に転職の意思を話してください、とお願いします。独身の方には言いません。この違いは、責任範囲に違いがあるからです。
既婚者は、生計を共にする家族がいます。配偶者が仕事を変えることによって、収入が変わるかもしれないし、転職することでリスクを伴う不安を抱えることになるからです。
大手日本企業から外資系企業へ転職する、などは該当するかもしれません。
配偶者からすると、そんな大切なことを結果だけ教えるというのは、という気持ちなのです。まして、揺れ動く微妙な時期に相談されると、反対、と言われれば、簡単に覆すことも十分あり得ます。
しかしながら、候補者は、自分自身の成長や、現職での不遇、現職に潜むリスクなどを深く深く考えているものです。であれば、それを配偶者に理解してもらうことが第一作業だ、ということなのです。
一方、独身者は、基本的には責任範囲が自分のみというケースが多いので、リスクも一人で追えばいいのです。ご自身の人生ですから、自分の責任で仕事を選ぶべきです。
私が過去に在籍した外資系ヘッドハント会社で、オファーステージですぐに結論を出せない候補者がいたときに、よく外国人に言われました。
「何で自分の人生なのに、誰かの意見を聞くのか?そこで失敗したら、相談者の責任にするのか?」
自分の意見さえ持っていれば、誰に相談をしてもいいと思いますが、相談者がノーと言ったから止めるということは、自分の人生にも責任を取れていないと感じてしまいます。