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旅・歴史 『男はつらいよ』を訪ねて

柴又~寅さんの町を訪ねて③ 帝釈天の鐘の音

男はつらいよのロケ地ガイドです。日本全国色々なところに行っています。とても面白い内容です。

男はつらいよのロケ地ガイドです。日本全国色々なところに行っています。とても面白い内容です。

夕暮れ時に帝釈天から聞こえる鐘の音は、日本人なら誰もが胸に響き、落ち着くことができる瞬間ではないでしょうか。そこにプラスして豆腐屋のラッパとカラスの鳴き声。たまりません!

映画では、そこから夕ご飯を寅さんが中心になって囲い、訪ねてきたマドンナと共に楽しい団らんがいつも描かれています。そもそも寅さんはなぜ旅に出ることになったのでしょう?映画で時々語られるのですが、口笛を吹く寅次郎、にて面白おかしく表現されています。

寅さんはお父さんの妾の子供として生まれます。父親とは折り合いが悪く、いつもぶつかっていたようです。ある日不良仲間とタバコを吸っていたとき、丁度近くにあるトイレに入っていた父親に見つかり、薪で頭をガツンと殴られ、頭がぱかっと割れて血が出ます。いくらオヤジでもやっていいことと悪いことがある!とタンカを切って家出をし、以来、旅人生活が始まってしまいました。

普通なら、一旦喧嘩をしてもお金もないし心細いこともあるだろうから、家に戻ると思うのですが、時代背景もあるのでしょうか、そのまま旅人になってしまうのも面白い話です。そんな生活に寅さんは合っていたのでしょう。

昔、高校の先生から、定職に就かないことの楽さについて話を聞いた覚えがあります。その先生は、路上生活を数か月やっていたそうですが、朝みんなが出勤している横で、グテーっと寝ていることの爽快感、ごみをあさることに抵抗感がなくなったとき、こんな楽な生活はない、と知ったそうです。その後、教師になっているのですから、元の道に戻れたのでしょうが、ディープな状況になっていたら、分からなかった、ということを言っていました。

その話は結構うけました。その時はただただ笑っていましたが、今思うと、受験前のピリピリ感を和らげてくれたのではないかとも思えます。でも、その後この映画に出会い、お金もないけど楽しく過ごしている寅さんのライフスタイルは、責任感から解放された永遠の憧れとして、私たちに語りかけてくれていると思います。

同時に、世間から縁遠くなってしまい、家族も作ることが出来ず、常に人に頼って生きていることの無力さも表現されていて、私たちは憧れと現実の間を映画を通して確認し、やっぱりまじめに働こう、という気持ちになるのも事実としてあると思います。

寅さん自身がそのように語ることが多く、俺のように薄汚れちゃいけねぇよ、と諭すシーンもまた感動したりするのであります。人生に迷い、人との関わりを避けたい、どこか遠くへ行きたい、と常々皆思うのですが、いろんな縛りがありできない。だから寅さんは多くのファンを持ち、長く続いた名作なのだと私は思います。

そして私自身ですが、寅さんのように生きる道を実は選んでいるかもしれないと思うことがあります。世間(組織)から離れたことにより得られた自由があり、その一方で心細さというか、寂しさも感じることがあるのです。責任を果たすことができれば、自由は手に入れられる、ということを良く考えていました。でも、それだけではない、消化することが難しいこともやはりあるのも事実です。だから友人や顧客から独立はうらやましいや、出来れば自分もしたいという相談を受けることがあっても、寅さんの如く諭すようにしています。

独立まで行き着くまで、どれだけのことを考えたか、そのことが大切だと感じる今日この頃でした。