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日本が目指すべきスタイル

日本のパスサッカーは崩壊してしまったのか、という議論がされています。もっというと、日本というより、世界的な視点で、すでにパスサッカーは終焉しているというものです。

ここ5年間、バルセロナが展開する圧倒的なポゼッションを中心としたパスサッカーは、世界を席巻しました。70%近いボールポゼッションをすることによって、相手にボールを渡さないこと。そして左右にボールを展開することによって、受けては常にボールを追い回さなければならなくなり、体力を消耗し、ひいては足が止まってしまう。そこを見計らって、容赦ない攻撃をぶつけるというものでした。

ハーフウェイから前でボールを展開しますから、非常にスペースが狭く、パスを通すための高い技術、そしてトラップが求められます。同時に、ショートパスの連続を行いますので、発想力なども必要になり、メンバー同士の意思の疎通という点も大変重要になります。そのようなスタイルをこなすためには、長い間メンバー同士が過ごす時間が必要がありますから、下部組織を大切にするバルセロナしかできないサッカーとも言われました。

伝統的なスタイルを下部組織の頃から徹底的に刷り込み、その果実がここ5年で実ったということになります。

それを実現するためには、パスを出す人、ゴールを決める人という役割があり、それがイニエスタ、シャビ、メッシであったといえます。昨シーズンバルセロナが勝てなかった理由、そして今回のワールドカップでスペインが早々に敗退した理由は共通は、シャビの衰えであるとなります。そしてバルセロナには戦術を理解する監督がいなくなったこと、スペイン代表はもともとメッシのようなフィニッシャーがいなかったことも挙げられます。特にスペイン代表は、監督のデルボスケがバルササッカーの上に載っていたので、それが崩れたときの対応ができなかったことであの悲劇でありました。

パスサッカーの終焉というのは、シャビの衰えをきっかけに、幕を引かれるというのがここまでのロジックとして成り立つと言えます。バルセロナが強かったとき、この強さは永遠であると錯覚したものですが、これを構成するメンバーとその戦術を理解する監督がいなくなった、それが大きいのでしょう。そうなると、次のサイクルが来るまで、バルササッカーはまた暗黒の時代に突入してしまうのか、その点は見守っていきたいと思います。

さて、それを模倣していた日本代表について検証していきたいと思います。前述のように、ポゼッションによるパスサッカーを展開していくためには、高い技術と意思の疎通が必要になります。

後者は、日本民族は得意な分野です。以心伝心という言葉がある通り、相手のことを思いやることができる日本人にとっては、このスタイルはとても性に合っているはずです。カウンターサッカーのほうがいい、という意見が今多く出ていますが、戦術で考えたとき、カウンターというのは高い技術が伴います。ボクシングでも、一発逆転のカウンターパンチ、というのは、高い技術を持ったボクサーでないと難しいことです。なんせ、一発で逆転ですからね。

日本はまだまだサッカーの歴史が浅い国です。個々の技術は向上し、ビッククラブで活躍する選手も出てきました。ただ言い換えれば、今はその段階でしかない、と理解した方が良いと思います。これから世界を動かすプレーヤーが出てくること(野球でいう、イチローやダルビッシュ、マー君など)、そして、海外で指導できる監督が育つことです。

特に監督は、高いレベルでの戦術などを欧州クラブなどで率いていくことができる人物の誕生次第で、日本サッカーの大きな飛躍が期待できることではないかと思っています。

個々の技術について検証してみると、これは選手やサッカー関係者が思っていたほど、高くはなかったようです。多くのパスミス、トラップミスがありましたし、パススピードも遅かった。志向しているパスサッカーは間違っているとは思いません。むしろ、そこに至っていないと考えるべきです。そこに至っていないのに、方向性が間違いだという判断は、違うと思います。

また、圧倒的にボールを支配するということは、途中でボールを失った時の対応も重要になってきます。全盛期のバルサは、攻撃よりもむしろ守りが強かったです。

スタジアムで試合を観ましたが、ボールを失った時の、プジョル、マスチェラーノ、アビダルの鬼のような形相はとても印象的でした。その意味でも、日本のディフェンダーの足の速さと約束事の欠如、何が何でも止めるという気概は薄かったと思います。

私としては、今後もこのままパスサッカーを続けてほしいし、その戦術に見合った監督の招集、選手の育成をお願いしたいと思っています。