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趣味・スポーツ ドラマ 天皇の料理番

見習うべき明治人の気骨

当時の白人社会においては、日本人などの黄色人種は不潔な存在であり、口に入るような料理を作らせてくれるはずがない、というのが当時の常識でした。
秋山は他に身寄りもなく(当時留学していた鹿賀丈史演ずる新太郎くらい)、皿洗いでもいいからということで何とか小さいレストランで働くことができます。そこで待っていたのは露骨ないじめでしたが、そんな扱いにも秋山は耐えます。

しかし、秋山に耐えられない出来事が起こります。

「トクゾー、こっちへ来い、いいから来い」
と呼ばれます。いつになくみんなにこやかで、優しい雰囲気でした。
「トクゾー、今日は何の日だ?そうだ、お前の誕生日だ、ハッピーバースディ!」
といって箱に入ったケーキが出されます。
秋山は、ようやく仲間になれたのだと喜び、嬉しさでいっぱいになりました。

しかし次の瞬間、その喜びは吹っ飛ぶことになります。

そこは、ゴキブリが乗り、サルの絵が描いた、秋山を侮辱する最低のケーキでした。
さすがに秋山は怒り、手に包丁を持ち、一対一の決闘だ、表へ出ろ、と怒鳴ります。
一同唖然となる中、秋山は包丁を床に落とし、涙が止まりません。

さすがに悪いと思ったのか、そのケーキを仕掛けた同僚は、秋山を食事に誘い、結局二人は仲よくなるのですが、子供ながらにこの描写は覚えており、私にすごいインパクトを与えました。

それから10年後の1990年、私は某レストランでアルバイトをするのですが、そこでパリ帰りのコックさんがいました。その人に軽くこの天皇の料理番の話をしたところ、一転すごく真剣で神妙な表情になり、このように語りました。

「今の俺があるのは、そういった先輩たちの苦労のおかげだよ。様々な偏見や差別に耐え、そこで努力する様を認めさせ、日本人の地位を向上させてくれた努力の上に、俺たちは乗っているんだ。このことは決して忘れてはいけないことなんだ。」

明治の人たちは学びたい、外国に引けを取らない日本にしたい、馬鹿にされない立派な国にしたい、という想いが強かったと思います。
今よりも圧倒的に情報が少ない中で、自分の信念を貫き、今の私たちに伝えているのです。
そんなことを感じる度、自分も何かを、と思う今日この頃です。

何よりいろんなことに興味を持つことが何より大切なのでしょう。